相続人に判断能力が不十分な方がいる場合のお手続きです

遺産分割協議には、相続人全員の承諾が必要です。
しかし、相続人の中に認知症などにより判断能力が不十分な方がいる場合、遺産分割協議を進めることができなくなります。
このような場合は、成年後見制度を利用し、成年後見人等を選任してもらう必要があります。

成年後見制度とは

成年後見制度は知的障害、精神障害、認知症などの理由により判断能力が十分でない方が、不利益を被らないよう家庭裁判所に申し立てをして、その方を法律的に支援してくれる人を選任してもらう制度です。
判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類の制度を利用できます。
家庭裁判所に選任された成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為を行ったり、本人が同意を得ないで行った不利益な法律行為を取り消したりすることにより、本人を保護、支援します。
なお、成年後見人等が選任されてもスーパーでお肉やお魚を買ったり、お店で洋服や靴を買ったりするような日常生活に必要な範囲の行為は本人が自由にすることができます。

申立に必要な書類と費用

成年後見制度を利用するには、本人の住所地の家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
申し立ての必要な書類と費用はおよそ以下のとおりですが、事案によって多少異なります。
詳しくは管轄の家庭裁判所に聞いてみるのがよいでしょう。

  • 申立書(定型の書式が家庭裁判所に行けば無料でもらえます)
  • 申立人の戸籍謄本1通(本人以外が申し立てるとき)
  • 本人の戸籍謄本、戸籍の附票、登記事項証明書、診断書各1通
  • 成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、登記事項証明書各1通(候補者がいる場合)

※登記事項証明書は、東京法務局などが発行する後見開始の審判等を受けていないか、あるいは既に受けているかについての証明書のことです。
※身分証明書は、本籍地の役所が発行する破産宣告を受けていない旨の証明書のことです。

  • 親族関係図
  • 本人の財産状況、収支予定表
  • 後見人候補者の身上書
  • 親族の同意書 など

また、費用としては以下のものがかかります。

1)収入印紙

後見開始の申し立て
後見開始の申し立て800円
保佐開始の申し立て
保佐開始の申し立て800円
※同意権追加付与の申し立て、代理権付与の申し立てを同時に行う場合、1つの申し立てにつき800円
補助開始の申し立て
補助開始の申し立て800円
※同意権追加付与の申し立て、代理権付与の申し立てを同時に行う場合、1つの申し立てにつき800円

2)切手

各裁判所によって異なりますが、およそ3,000〜5,000円程度です。

3)登記費用

成年後見制度では、その結果を登記する必要があります。
そのための費用として登記印紙4,000円分が必要となります。
※収入印紙とは異なりますのでご注意ください。

4)鑑定費用

成年後見制度を利用する場合は、本人の精神の状況について鑑定をしなければならない場合があります。
鑑定費用の額は事案にもよりますが、およそ5〜15万円程度です。