被相続人が遺言を遺していなかった場合で、さらに法定相続分ではない分け方をする場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
ところが、そもそも被相続人がどのような財産を有していたかは、調べてみないとわからない場合があります。
したがって遺産分割協議を行う前には、被相続人の相続財産を調査して「財産目録」を作成するのが一般的です。

また、被相続人が遺言を書いていた場合であっても、遺言執行者はその職務の一つとして「財産目録」を作成し、相続人や受遺者に交付することとされています。
ここでは主な相続財産について、その調査方法や評価方法をご紹介いたします。

不動産の調査と評価

1.不動産がどこにあるのかを調査する

ご自宅(持ち家)については、そもそも“どこにあるのか”は、相続人の皆さんがご存じなので特に問題にはならないかと思います。
ところが、だいぶ若いころ(特にバブルの頃)にどこかの県の山林を買ったがどこにあるのかは知らない、ということがまれにあります。
このような場合は、被相続人名義の不動産がある市町村から「固定資産税の通知書(納付書)」が送付されていますので、それによって被相続人の方が所有していた不動産の所在地がわかります。
また、権利証によっても所在地を知ることが可能です。
ただし、固定資産評価額があまりに少額の場合は、固定資産税の通知書が送付されない場合があります。この場合は、なんとかあたりをつけて調査せざるを得ません。
どこに不動産があるのかがわかったら、さらにどのような内容で土地や建物が登記(=法務局への登録)されているかを、登記事項証明書(昔で言う登記簿謄本)を取得し、確認する必要があります。
「お父さん(被相続人)の名義だと思っていたら、お祖父さんの名義のままだった」というようなこともめずらしくありません。
この場合はさらにお祖父さんの相続手続きも必要になる可能性が高いです。

2.不動産がいくらなのかという評価をする

不動産の評価方法はいろいろありますが、原則として、どのような方法で評価をするかについて法律上決まりはありません。
不動産の評価方法としては、主につぎのようなものがあります。

①固定資産評価額を参考にする方法

毎年市町村から送付される固定資産税の通知書には、土地・建物の固定資産評価額が記載されています。
また、別途「固定資産評価証明書」を発行してもらうことも可能です。
相続人の間で特にもめたりしていないのであれば、この方法が一番簡単で、一番代表的な方法です。

②路線価を参考にする方法(土地のみ)

特に相続税がかかる場合、土地については路線価での評価額が基準になります。
建物については固定資産評価額が基準です。
ただし、路線価による評価は、土地の形状などによって計算方法が難しい場合がありますので、税理士に相談された方が確実です。

③不動産業者に評価を委託する

土地や建物の現状を査定してもらい、主に売買価格の面から評価をしてもらえます。
もし相続手続きの後に売却をお考えの場合は、不動産業者に相談されると良いかもしれません。

④不動産鑑定士に評価を委託する

不動産鑑定の国家資格者が、取引事例比較法、収益還元法、原価法などを駆使し、より精度の高い評価をしてもらうことが可能です。
相続人がたくさんいて、不動産の評価額について争いが起こりそうなのであれば、初めから専門家にしっかりと評価してもらった方が良いかもしれません。