ここでは、遺言に関するお客様からよく頂く質問を3つ取り上げて、解説していきます。

A) 特定の人に相続させたくない場合

特定の人に相続をさせたくない場合はよくあります。 一体どのようにすれば、特定の人間に遺産を相続させないことが出来るのでしょうか。

よくある失敗事例

私の兄は妻子と長年別居しており、近所に住む姉と私が兄の生活を面倒見ていましたので、妻子には相続させず、姉と私に遺産を相続させたいと生前話しておりました。

しかし、兄は遺言を残すことなく、他界してしまいました。 そして、遺言がないばっかりに、私と姉は兄の遺産を相続することなく、兄が財産を渡したくないと考えていた妻や子供に全ての遺産が渡ってしまいました。

遺産分割後、専門家に話を聞くと、「妻子の遺留分が存在するので、遺産全部を渡さないことは不可能だが、遺言に一言『姉と私にも相続をさせる旨』を記しておけば、遺贈という形式で遺産は相続できました。」と話してくれました。

この話を聞き、相続して欲しい人に相続させられず、相続させたくない人に財産が渡ってしまい、兄がかわいそうでなりません。

私は兄に遺言を書かせなかったことを心から後悔しています。

では、どのような遺言を書けばよかったのでしょうか。

対策のポイント

兄弟姉妹は、被相続人に子供やその孫等の代襲相続人がなく、直系尊属(両親・祖父母)がいない場合に、初めて相続人となることができます。 つまり、裏を返すと、被相続人の兄弟姉妹は遺言がなければ、遺産相続は全くできないのです。

ですから、兄弟姉妹にも相続させる旨の遺言を残す必要があったのです。

B) 遺言だけを信用してはいけません

上記の例は遺言の必要性、重要性についてお話してきましたが、遺言を鵜呑みにして全面的に信用し痛い目に遭ってしまうという失敗事例を紹介します。

よくある失敗事例

5年ほど前に父が亡くなり、発見した遺言に書いてある通り、不動産、預金などを母と私と妹で分割しました。 このときは特に専門家に相談することなく、遺言の通りに母には住宅と不動産、私には3000万円ほどの預貯金、妹には額面2900万円ほどの株式をそれぞれ相続し、財産を分割しました。

そして、父が亡くなって一年後、突然固定資産税の通知が隣県のS市から父宛てに届きました。 改めて、S市の名寄帳などで調査してみると、父がそのS市に家庭菜園用の土地を保有していたことが判明しました。

しばらくすると、株式の評価額が大幅に下落してしまったために損をした妹が、「その家庭菜園用の土地を相続したい」と言いはじめ、「もし認められなければ、遺産分割を無効にする為に、裁判所に対して、『調停の申立て』か『訴訟』を起こす」と言い始めたのです。 こんなことであれば、専門家に依頼して洗いざらい財産調査をするべきだった、と後悔しています。

対策のポイント

遺言の内容を全面的に信じ込まずに、専門家に依頼し、一度は財産調査をかける。

このように、遺言を利用して、後悔しない遺産分割を実現する為には、たくさんの事例を体験している専門家でないと、ポイントを押さえたアドバイスは出来ません。

専門家に相談しなかったばかりにかえって意図しないような結果を招く事もありますので、遺言で何か気になることがございましたらまず、ご相談下さい。